あらすじ
「他人とは暮らせませんのでwと言われた母、実は家計の柱でした」
静かな台所で
湯気の立つ味噌汁をかき混ぜながら
私はずっと
家族の背中を支えていた
気づかれないまま
当たり前のように
朝の電気代
夜の灯り
冷蔵庫の中の安心
すべてを
黙って守っていた
——それでも
新しい家の玄関で
笑いながら言われた言葉
「他人とは暮らせませんのでw」
その「w」が
妙に軽くて
長い年月より
重く胸に落ちた
私は頷き
荷物をまとめ
そっと扉を閉めた
振り返らずに
止めたのは
振込だけ
止まったのは
家の時間
ローンの通知
空っぽの口座
沈黙する父の背中
そして
やっと気づく
家を支えていたのは
声の大きい人じゃない
静かに働く
ひとりの母だったと
遠くの窓から
新しい朝日を見ながら
私はコーヒーを飲む
もう
誰の家計でもない
私の人生を
支えるために。