あらすじ
深い海の底、トリトンの城。
そこは「守られるだけ」の永遠が約束された、単色の世界。
少女シメールは、自由と色彩を求め、五千年の時を生きる元海女帝・莉亜(サメリア)を頼って陸へと上がる。
辿り着いたのは、街の片隅に佇む不思議な場所**「硝子灯薬房(ガラスビヤクボウ)」**。
そこには、厳しくも自由な師匠・莉亜、不器用ながらも「世界の理」を求める魔術師の兄・海斗、そして魔法道具職人のシーラ一家といった、温かくも「限りある時」を生きる人々が待っていた。
シメールは、自身の魔力「蜂蜜酒」を言葉ではなく**「歌」**として紡ぐことで、精霊と対等な契約を結ぶ術を学び始める。
それは、自分とは違う感情の言葉を持つ「異国の住人」たちと心を通わせるための、彼女なりの外交術。
けれど、満ちていく月がいつか欠けるように、優しい日々の中にも世界の残酷な「理」は静かに忍び寄る。
海(過去)と陸(現在)の狭間で、傷つきながらも自分だけの名前と居場所を見つけていく、自立と旋律の物語。
――たとえ月が欠けても、その先に希望の灯火を灯すために。