あらすじ
階段から転落し、後頭部を強打した小学生の「僕」。その日を境に、大切な人の死が近づくと視界が「黒いフィルター」で覆われるという奇妙な能力が備わる。周囲の大人には理解されず、孤独な不安を抱える僕だったが、中学、高校と時を重ねる中で、その能力が「自分が悲しむ死」への予兆であることを悟っていく。
大学生になったある日、視界はこれまでにない「黄色」に染まる。戸惑う僕の前に現れたのは、自らを「井戸の住人」と称し、自在に姿を変える正体不明の怪異だった。黄色い視界が告げたのは、死ではなく「厄介な女」への警告。能力の新たな側面を知り、最悪の事態を免れた僕は、高校時代の憧れだった同級生・杉山さんと再会を果たす。
社会人となり、死(黒)と希望(緑)が混ざり合った二色の視界を経て、僕は杉山さんと結ばれる。そして数年後、視界は見たこともないほど優しく穏やかな「桜色」に包まれた。それは、これまでの不吉な予兆をすべて塗り替える、新しき命の誕生を告げる祝福の色だった。