あらすじ
初恋とは、つまり殺人である。
【あらすじ】※下記にはネタバレを含みます
高校へと進学した僕・北山陽太は、かつての初恋相手である彼女・倉持愛花梨と運命的な再会を果たす。しかし、中学時代の凄惨ないじめをきっかけに、彼女の心は四つの人格へと分裂していた。
現れた四つの人格は、僕の記憶にある彼女とはかけ離れた歪な存在だったが、僕はかつての初恋を取り戻すべく、彼女たちの人間関係を修復し、隠された真の愛花梨・アカリを復活させるための奔走を誓う。そして、僕は彼女の人間関係を修復し、壮絶な家庭環境にも踏み込んで、彼女の孤独を和らげることに成功する。
だが、季節が夏へと移ろう中で、アカリが復活する目途は中々立たず、僕は次第に四つの人格へ心を許し始める。献身的に寄り添う僕の目には、自然を慈しむ彼女たちの姿がかつてのアカリの片鱗として映り、いつしか彼はアカリへの執着と、今目の前にいる四つの人格への愛情との間で激しく揺れ動く。
友人との交流を通じて、自分の初恋は幻想だったのではないかという疑念すら抱くが、最後には、この感情こそが初恋だと定義し、四つの人格をありのまま愛し続ける覚悟を決めた。
しかし、冬の訪れとともに、四つの人格はその境界を曖昧にし、アカリに”近い”人格へと統合されてしまった。初めからそれを悟っていた四つの人格は、僕への感謝をビデオメッセージで遺していた。僕は自身の愛が皮肉にも四つの人格を殺してしまい、彼女達の脅威の正体を「自分たちが溺愛されて消えること」だと知った。僕は四つの人格を救えなかった自責と、四人を愛したことによるアカリへの後ろめたさに苛まれ、心に深い空白を抱えることになった。
統合された彼女は、僕に苦難を乗り越えた記憶への感謝を告げ、これからは自分を愛してほしいと願った。だが、統合後の彼女は自然を好まず、四人の誰とも異なる所作を見せていた。僕は彼女の日記を四つの人格代わりにして精神を保っていたが、ふとした瞬間に彼女の所作に消えた四人の面影を見出し、止めどない涙で足元の雪を濡らすのだった。