あらすじ
帝国史上最強と謳われた聖女リナリアは、ある日突然、何の説明もないまま北の果ての森へと追放された。
武器もなく、仲間もなく、残ったのは小さな荷物ひとつ。
それでも彼女が最初にしたことは——祈りではなく、焚き火だった。
誰かのために使い続けてきた魔力を、今日は自分のために使う。
不格好に焦げた焼き芋を一口食べた時、リナリアは初めて気づいた。
私、まだ、味がするんだ。
傷ついた銀の狼、毒舌だけど甘いものに目がない妖精、そして次々と現れる「敵のはずの者たち」——。
彼らを変えていくのは、剣でも魔法でもなく、食卓から漂う、あまりにも暴力的に良い匂いだった。
使い潰された聖女が、追放先の森で取り戻していくのは、
誰かの道具ではない、自分自身の温かさ。
最強の魔力は、今日もパンを焼くための温度管理に使われている。