あらすじ

近畿大学文芸学部芸術学科に通う片岡紅葉は茹だる様な暑さの重力に押しつぶされていた。 夏休みである。 蒸し暑い劇場の中央にはパンチパーマの老人が捻じれた向日葵の様なポーズで「模倣しなさい」 と言っている。模倣したくない紅葉は老人を拒絶する。友人の赤城千与子は量産されたSNSのダンス動画を見て我関せずだ。 片岡と赤城は旧校舎のカビ臭い劇場に泊まり込んでいた。深夜の誰もいないはずの劇場のエレベーターが動き出し、封鎖されている筈の七階で止まる。さらに劇場の中で何か音がするではないか。 その日、近鉄大阪線長瀬駅は封鎖されていた。それをまだ、片岡と赤城は知らない。 情報通の宇綺京介から話を聞いている最中、アリエナイ事が判明する。 怪異なんていないんだよ、と片岡紅葉は赤城に言うが不思議な事は起こり続けている。 夏の暑さにやられてしまったか、全てはフェイク。偽物か。 蝉時雨が遥か上空で火花を散らし、鎮魂歌を歌い続ける。私は夏の肥料である。 煌びやかな夏の日々に殺された私の躯は、潰され地中に溶けていく。 お母様は言った。人は人のマネをする生き物よ。それが喩え、自らの命を絶つ行為であっても。 片岡紅葉は模倣しない。 エントロピー先輩は言った。人と同じ生き方はエントロピーの増大に抗う行為だ。その先は、死だ。 真夏の大学の隅っこで、自分らしく生きようとした片岡紅葉が抗い踊る。 蝉が飛ぶなら私は落ちて、私が飛ぶなら蝉は落つ エレベーターはおりんの様にチィンと鳴る

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カクヨム
カクヨム2026/03/31
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