あらすじ
その出会いが、ひとつの恋になるとは――このときの僕は、まだ知らない。
偶然のように始まった出会いは、やがてかけがえのないものへと変わっていく。
進級を前に、楓が選ぶ答えは――F組に残ること、そして天音の隣にいること。
父の転勤を機に、国内屈指の進学校・白真珠高校へ転入することになった高校二年生・月野楓。
慣れない街での生活が始まったばかりの雨の日、楓は街角で一人の青年とぶつかる。傘を拾いに行ったその背に車が迫り、とっさに腕を引いて助けた楓は、抱きしめる形で彼を守ることになる。
近すぎる距離。触れた体温。
低く穏やかな声で礼を告げた青年は、名も残さず去っていく。
数日後、今度は駅の階段から落ちかけた楓を、息を呑むほど美しい“女性”が救う。
出来すぎた偶然に戸惑いながらも、楓はまだ知らない。
その二つの出会いが、一人の人物に繋がっていることを。
白真珠高校には、特別なクラスが存在する。
眉目秀麗、文武両道、そして高い規範意識――選び抜かれた生徒だけが集められた、二年F組。
男子同士の恋愛を前提として編成された、学年でただ一つのクラス。
本来そこに縁のないはずの楓は、担任の手違いによってそのクラスに入ることになってしまう。
周囲は誰もが完成された存在ばかり。そんな中で抱いた違和感は、やがて少しずつ形を変えていく。
そこで再会したのが、学年首位にして誰もが一目置く、どこか近寄りがたい存在――氷翠天音。
クールで完璧、けれどどこか感覚がズレている彼は、初対面にもかかわらず楓をいきなり抱きしめる。
そして明らかになる。雨の日に助けた青年も、駅で出会った“女性”も――すべてが天音だったのだ。
幼い頃の出来事をきっかけに女装をしていた天音は、あの一瞬で楓に心を奪われていた。
それ以来、遠慮なく向けられる一途すぎる好意。
言葉は少ないのに距離だけが近い、不器用でまっすぐな関わり方。
ときに独占的とも言えるその在り方に、楓の心は少しずつ揺らいでいく。だが、その関係は単純ではない。
天音の親友・日向は複雑な感情を抱えながら楓に惹かれていき、その想いはやがて本物へと変わっていく。
近づくほどに分からなくなる距離。
それでも、離れたくないと願ってしまう感情。
やがて訪れる、進級という選択。
残るか、離れるか。
誰かに与えられた場所ではなく、自分で選び取る未来へ。
楓が選ぶ答えは――
――「これでいい」じゃなくて、「これがいい」。
不器用で少しズレた完璧な彼と、ツッコミ気質の転校生が織りなす、
笑って戸惑って、ときどき胸が締めつけられる青春ラブストーリー。