あらすじ
「怖れるほど、人は弱くなる」
そんな理が支配する現世(うつしよ)で、総一郎は、大事なものを失った。
かつて、彼の傍には、二人の女がいた。
両方を愛することはできない。総一郎の気持ちは、とうに決まっていた。
すると、女たちの間に、決定的な差が生まれる。
愛を手にした女が、失うことを「怖れた」のだ。
一方、破れた女には失うものなどなく、怖れもなくなった。力を増し、兇刃を振るうに至ってしまう。
これが、憂き世の理。
怖れる者は弱く、何も怖れぬ悪辣ほど強くなる。
そして、悪辣となってしまった女の手で、総一郎は、愛する人を失った。
ただ、見ていることしかできなかった。
彼もまた、奪われることを、怖れていたから。
月日が経ち、憂き世の理に打ち克つ力を求め、総一郎は旅に出た。
出会ったのは、互いへの好意を持つことを禁じられた男女。
愛を隠し、怖れを押し殺し、男は戦っていた。しかし、女の前で、想いは必ず露わとなる。弱さとして。
そんな中にも、総一郎は見出した。男の強さを。
そして知る。
恐怖にあらがう「勇気」が、憂き世の理にあらがう、無二の武器なのだと。
次なる地。
そこで総一郎を待っていたのは、かつて自分を慕ってくれていた女だった。愛した人の命を奪った仇でもある。
総一郎にとって、怖れの象徴だ。
碌でもない理が支配するこの現世で、されど愛を手放さず、勇気だけを糧に立ち向かう。
それを知る総一郎は、怖れを断ち切るように、刃を振り下ろす。