あらすじ
遅刻や忘れ物ばかりで、何をやってもうまくいかない高校生の安藤杏。
定型的な「普通」の枠からはみ出し、世界が灰色に見える彼女は、厄払いに訪れた神社で一つ上の先輩・中田啓治と出会う。
ひょんなことから美術部に入部し、キャンバスに向かう「過集中」という自分だけの才能を見出す杏。しかし、彼女は気づいてしまう。
誰もが振り返る風貌で、確かな画力を持つ中田が、なぜか「自分の本当の色」を頑なに隠し、他人の目を気にしたような息苦しい絵を描いていることに。
社会のルールに縛られ、自分らしさを失っていく二人。
それでも杏は、衝動のままに不器用な手を伸ばし、先輩のキャンバスに問いかける。
「先輩の色使い、好きです。自分に嘘をつかないでください」
空気が読めない少女の真っ直ぐな言葉が、論理で塗り固められた少年の世界を打ち砕く。
これは、社会から浮いてしまうはみ出し者の少女と、本当の自分を隠し続ける少年が、キャンバスの上で自分たちだけの「色」を見つけ出す、喪失と再生――そして、不器用な恋の物語。