あらすじ
2032年。人類の七割がARデバイスを装着し、視界に溢れる広告と飛び交う情報に慣れ切った日本。国立大学の准教授・園田志保は、国家ARプロジェクト「izanagi」の元中核メンバーだったが、組織の保身のために追放された過去を持つ。自分が夢見た技術は「人を管理するための道具」に歪められ、功績は上司に横取りされた。今は大学の片隅でひっそりと研究を続ける日々——それが、彼女の「現実」だった。
そんな志保の前に現れたのが、車椅子の歌姫・駒路姫乃。ある事故で歩くことができなくなりながらも、並外れた歌唱力で一世を風靡した少女。しかし、世界はいつも彼女の「境遇」にしか感動しない。同情という名の消費に飽き飽きした姫乃と、技術の搾取に憤り続ける志保。二人は「利用し合う」という不純な契約を結び——そこから、静かな革命が動き出す。
志保が開発したARシステム——それは現実に情報を「追加」するのではなく、現実そのものを「浸食」していく。姫乃の歌声と融合したその新たな「現実」は数万の観客を震撼させ、二人は世界中の注目を集め始める。だが、追放してきた「izanagi」の重役がその技術を狙って志保に接触してくる。
同情されたくない歌姫と、革命を選ぶ技術者。二人の宣戦布告が、同情と搾取で塗り固められた世界に牙を剥く。
『これは現実に対する、私たちからの宣戦布告です』——その言葉通り、彼女たちは世界を浸食し始める。
※なろうとカクヨムで同時連載しています