あらすじ
東京、ビジネス街と住宅街の境界線。
路地裏に佇む朝ごはん専門店『ASAごはんdining』。
店主の榊創志(さかき そうし)は、現役神職の兄を持つ神社の次男坊。
彼には、相手の肌に指先が触れる一瞬の接触で、その人が心の奥底に仕舞い込んだ「記憶の景色と味」を視通す不思議な力があった。
この店のメニューは二つだけ。
『日替わり朝定食』と、『おまかせ定食』。
店主が接触によって得たビジョンを頼りに、その時その客が最も必要としている一皿を再現する「おまかせ」は、疲れ果てた大人たちの心を解きほぐす、奇跡の処方箋だった。
明るい接客で店を支える助手・古閑凛太郎(こが りんたろう)は、元ブラック企業の営業職。かつてのトラウマからか、中学時代の記憶が朧げに欠落しており、なぜか榊の力をもってしてもその過去を視ることができない。
「美味しい」は分かるけれど、「懐かしい」が分からない。
そんな相棒の「空白」に寄り添いながら、榊は今日もお腹と心を温める一朝を供する。
誰かの一日は、ここから動き出す。
「おはようございます。『ASAごはんdining』開店です」
美味しい朝ごはんと、失われた記憶を巡る至福のヒューマンドラマ。