あらすじ
離れても消えないものを、わたしたちは写真に残した。
春、岡山から明石へ引っ越してきた川村歩未は、人見知りな性格に不安を抱えながら高校の入学式を迎える。校門の前で立ち尽くしていた彼女に声をかけたのは、明るく行動力のある中西陽菜と、物静かで本好きな橋本時子だった。同じ景色に惹かれて同じ高校を選んだ三人は、屋上から望む明石海峡大橋をきっかけに親しくなっていく。写真が好きな歩未は、本格的なカメラで二人との日常や明石の風景を記録していく。歩未が手にしているのは、気軽に撮れるスマートフォンではなく、一眼レフのカメラだった。構図や光を考え、被写体と向き合わなければ写らないその道具は、踏み出す勇気を持てない歩未自身の在り方と重なっている。彼女はシャッターを切ることで、明石の街と二人との時間を一枚ずつ確かめるように記録していく。明石焼きを食べ、花火を見上げ、雨の日の図書室で将来の話をする。雪の降る夜に雪だるまを作って笑い合う。特別な出来事があるわけではないけれど、三人で過ごす時間は少しずつかけがえのないものになっていった。しかし学年が上がるにつれ、それぞれの進路や家庭の事情が見えはじめ、三人の関係にも少しずつ変化の気配が訪れる。距離や時間が変わっていくことへの不安、将来への迷い、それでも一緒にいたいという気持ち。揺れ動く心の中で、歩未は写真を撮り続けることで、自分の居場所と三人の時間を確かめようとする。明石の街を舞台に、三人の少女が出会い、悩み、離れ、そしてそれでもつながり続けようとする姿を描いた、青春の記録物語。