あらすじ
異世界転生をし、不老不死の皇帝として君臨した男がいた。もう前世の名前すら憶えていないが、一つだけ胸に滾るものがある。
それは冒険へのあこがれだ。
摩天楼そびえる北大陸を治める『帝国』
戦乱疫病盗賊の聖地である南大陸は『試練の大地』
皇帝ローラント一世が、新たにローエン・スターリングとして一から冒険者になるお話。
南大陸は、病院もねえ、火薬もねえ、魔法もねえ(ある)、内燃機関もねえ、馬もめったに走ってねえ。なんなら食料やトイレもヤバイ。
真昼間から武装強盗が出る愉快な世界だ。
「それでも朕は南で一の冒険者として歴史に名を遺す!」
魔道と科学の力を有した男の、下剋上されるかもしれない物語だ。
◆
帝国内務省・聖帝近衛騎士隊長のアニエス・ワーウィックは切れ散らかしていた。
「陛下の玉体を保護し奉れ! 絶対に帝国へお連れするのだ!」
次期皇帝—―不死の存在なので実質の名誉職。皇帝の血族であるローガン皇太子は屈辱を味わっていた。
「畏れ多くも始祖たる陛下を襲っただと? 上等だ、南の蛮族どもに地獄を味合わせてやれ」
帝国宰相・クレア・ウィンチェスターは既に作戦を練り上げていた。
「聖帝陛下の御言葉に背くは大罪。しかし、我が愛の証として奪還作戦は成功させる」
過剰なまでに崇拝され、絶対的な権力を持つローラント一世には、忠誠心がゲージを振り切っている部下が多くいた。
「嫌な予感がする。朕は絶対に帝国には戻らん」
その決意がいつまで続くのだろうか。