あらすじ

復讐のレシピ

水を張ったガラスの中で
白い根がほどけていく

光の方へ伸びるそれを
私は、ただ見ていた

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「これは食べられるのか?」

誰かがそう言った気がする

でも私は
答えなかった

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台所には
似た形のものが並んでいた

細くて
白くて
静かに命を含んでいるもの

どちらが食べられて
どちらが死を運ぶのか

私は知っていた

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でも
教えなかった

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鍋の中で
香りが立つ

油と熱と
刻まれた何かの匂い

それはいつも通りで
だからこそ
何も変わらなかった

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名前を書いた夜

紙の上に並ぶ文字は
ただの記号のはずなのに

指先が少しだけ震えた

祈りでもなく
呪いでもなく
ただ
終わってほしかっただけ

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食卓には
湯気が上がる

誰も疑わず
誰も確かめず
当たり前のように口に運ぶ

その一口の奥にあるものを
誰も知らない

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私はいなかった

だから
止めることもできなかった

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朝になっても
誰も起きてこない

静かな家に
残るのは匂いだけ

あの夜の
あの鍋の
あの選ばれなかった言葉の

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後から知った

あれは毒だったらしい

でも
私は何もしていない

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ただ

知っていて
何もしなかっただけだ

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ノートを開く

余白はまだ残っている

書くべきかどうか
分からないまま

私はペンを置いた

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復讐は
火でも刃でもなく

たぶん

沈黙のかたちをしている

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アルファポリス
アルファポリス2026/03/31
  • 現在の作品復讐のレシピ