あらすじ
目の前の花嫁の死体は、わざわざ自ら暖炉に顔を突っ込み、ご丁寧に魔法の炎で激しく焼かれていた。
チリチリと肉が焦げる音と、むせ返るような異臭。
魔法の非常口に閉ざされた完全密室の中で、傲慢な魔術鑑定士が「魔法の痕跡がすべてだ」と勝ち誇っている。
だが俺は、そんなファンタジーの狂騒には目もくれず、ただ黒焦げになった身体を観察していた。
火傷の周囲に水ぶくれ一つないこの遺体は、彼らが絶対視する「魔法」よりもよほど雄弁に真実を語っているのだから。
――事の始まりは数日前。俺の数少ない雇い主が「顔なき花嫁の護衛」という厄介な依頼を持ち込んできた日に遡る。