あらすじ
那須の高原、どんよりとした曇り空の下。
庭に現れた小さなモグラの塚を前に、二匹の野良猫の女の子たちが動かなくなった。
朝から昼へ、そして日が暮れるまで。
彼女たちは一日のすべてを使い、代わる代わるその土の山を見守り、見えない獲物へ鋭く爪を立てる。
一見すればただの狩り。
けれど、そのひたむきな背中を見つめるうち、私はあることに気づく。
これは、言葉を持たない彼女たちが、毎日ご飯を運ぶ私へ贈ろうとした、精一杯の「恩返し」だったのではないか――。
捕まらなかった獲物と、確かに残された温かい爪痕。那須の庭で起きた、切なくて愛おしい一日の実話エッセイ。