あらすじ
江城(こうじょう)の厳しい冬が明けようとする早春。青い長衫(チャンサン)を纏う男、沈清舟は、骨の髄まで染み渡るような「嫩寒(どんかん)」から逃れるように、馴染みの小店へと足を踏み入れる。
そこには温かな火鉢と、女将が温める銘酒「杜康」の香りが待っていた。盃に映る己の影を見つめながら、沈清舟は自覚する。自分が求めているのは酒の酔いではなく、凍てついた過去の記憶――「あの夢」から一時でも解放されるための、束の間の安らぎであることを。
春の訪れを前に、男の止まった時間が静かに揺れ動く、孤独と再生の物語。