あらすじ
公爵令嬢リリアーナ・エルヴァルトは、王太子アルベリクから「悪役」と断じられ、婚約を破棄される。
だが彼女は、取り乱すこともなく静かにその場を去った。
——それが、王国にとって致命的な選択だとも知らずに。
彼女はこれまで、表に出ることなく情報を統制し、貴族を調整し、王太子の失言と失策を裏から修正していた。
王国の秩序はすべて、彼女の手によって保たれていたのだ。
しかし、その事実を誰も理解していなかった。
彼女を失った王国は、やがて静かに、そして確実に崩壊を始める。
会議はまとまらず、情報は届かず、貴族は離反し、陰謀すら見抜けない。
一方——追放されたリリアーナが辿り着いたのは、生者なき異界「死者の国」。
骸骨や霊が日常のように存在するその国で、彼女は“観察対象”として扱われる。
だが、情報の歪みに気づいた彼女は、持ち前の分析力で問題を指摘し、やがて死者たちの情報網を再構築していく。
その才覚を見抜いたのは、冷徹で合理的な吸血鬼貴族ヴァルディス。
彼は彼女を「利用価値のある存在」として側に置き、やがて——
「お前は代替が効かない」
感情を持たないはずの吸血鬼は、次第に彼女へと執着していく。
一方その頃、王国では。
「なぜ何もかも上手くいかない……」
すべてを失い始めた王太子が、ようやく気づき始めていた。
——自分が切り捨てた存在の価値に。
これは、すべてを奪われたはずの悪役令嬢が、
“本当の居場所”と“自分を理解する存在”を手に入れる物語。
そして、自らの愚かさに気づいた者たちが、取り返しのつかない代償を払う物語である。