あらすじ

壮年の男性である遠野尋は、趣味の山歩きの最中に不可思議な空間へ意図せず立ち入ってしまった。  そこは超常の存在である際女(きわめ)と名乗る存在の神域であった。許可なく神域に立ち入ったことへの贖罪として、尋は異なる世界へと誘われ、その地で十六片の写本を焚書しなければならなくなった。  異世界でフィロと名を改め、約半年間でその世界の常識を学びつつ、際女から与えられた《力》を使いこなす鍛錬を積んだ。  際女から遣わされた写本の位置をおおまかに察知できる少女キョウと、半年間戦闘の指導を行ってくれた女性アミィとで、フィロは焚書を開始した。  この世界は一つの帝国によって統治されており、各地は領として区分されそれぞれの領は領主である貴族に統治が委任されている。 その領の一つで、国境である水鏡教の礼拝堂内に公開されている写本を、夜間に潜入し焚書に成功する。  追われる身となったフィロ達は、追手から逃れようと移動する途中で自分達の焚書を目撃した三人組と出会う。  三人組は隣領の領主一族サァラと臣下である双子のルゥアンとリィン。領主が領政に不満を持つ領民によって襲われ、意識が戻っていない事態の解決に協力するよう依頼される。領主一族の指揮によって事態が解決できなければ、統治能力不足と見做され皇室に領地を没収されてしまうが、領軍の司令官も領主に不満を抱いているため、軍を動かせず人手が足りないからだ。  領主に危害を加えた集団の発起人ウィムが写本を有しており、それを譲渡されることを条件にフィロ達は承諾した。だが、集団を捕らえてしまえば容易に決着すると考えていた状況が、想定外の事態によって覆されてしまった。  領主を害した集団は発起人を除いて、隣領の領主争いに敗れたコゥズという人物によって抹殺され、このままでは事件解決の功績と共に領主の座を掠め取られてしまう。この事件そのものが、領主の座を奪おうとするコゥズと軍総司令官によって仕組まれた陰謀であった。  苦肉の策として、フィロは解決の方法を犯人の確保ではなく、領民から領主として相応しいと信任されることへすり替える。  初代皇帝の統治方針であり各地の領主へと発せられた、民を安んずることを第一とせよとの訓令は、現在も建前とはいえ有効であった。これを利用し、これまで善政を敷いてきた現領主へと領民の支持を集め、この事件の調査へ訪れていた中央皇帝領から派遣された査察団の立ち合いの元に現領主の正当性を認めさせることに成功した。  そして逃亡していたウィムに出頭させ、所持していた写本の焚書を成し遂げたのだった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/03/30
  • 現在の作品異世界焚書譚