あらすじ
完全に管理され、死にゆくディストピア「アストロガルド」。人類再生の希望を託された「アダムとイブ」計画は、転送装置の致命的なバグにより崩壊する。未知の新世界に降り立ったのは、エリート軍人であるジンと、主任研究員のルカ――二人の「男」だけだった。
過酷な大自然の中、絶望に打ちひしがれるジンの心を繋ぎ止めるため、ルカは冷酷な決断を下す。それは、自身の持つ高度な魔法で夜ごとに「女の体」へと変化し、不在のイブの代用品としてジンの欲望を受け入れるという、歪で残酷な契約だった。
昼は背中を預け合う相棒として生き抜くための開拓に汗を流し、夜は互いの孤独と絶望を埋め合わせるように体を重ねる。凄絶なサバイバル生活の中で、二人はシェルターを作り、畑を耕し、少しずつこの世界に根を下ろしていく。しかし、二人の絆が深まれば深まるほど、ルカは「彼が抱いているのは女の幻だ」という事実に苦しみ、ジンもまた「ルカに自己犠牲を強いている」という罪悪感に苛まれるようになっていく。
転機は、過労と魔法の連続使用によりルカが高熱を出して倒れたことで訪れる。死の淵を彷徨うルカを不眠不休で看病するジン。その狂おしいほどの愛に触れ、二人はついに「魔法の嘘」を捨てることを決意する。幻の女の体ではなく、ありのままの男の体で互いを抱きしめ合った夜。痛みも、恐れもすべてを分け合い、二人は本当の意味で魂を結び合わせた、唯一無二の「番(つがい)」となった。
嘘のない愛を育み始めた二人に、新世界の規格外のマナはさらなるバグ――いや、奇跡をもたらす。ルカの男の体に、新しい命が宿ったのだ。化け物になったと怯えるルカを、ジンは涙を流して強く抱きしめ、共にこの命を守り抜くと誓う。
厳しい冬の足音が近づく中、二人は頑丈な丸太の家を完成させ、小さなゆりかごを作り、産着を縫いながら、あたたかくて甘い「愛の箱庭」の日々を送る。そして猛吹雪の夜、ルカは命を懸けた魔法で肉体を開き、ジンとの愛の結晶である男の子「ノア」を無事に産み落とす。
それから数年後。絶望と死しかなかった泉のほとりは、豊かな畑と笑い声が溢れる場所になっていた。不器用ながらも愛情深い父親となったジンと、微笑みながら二人を見守るルカ、そして元気に走り回るノア。
アストロガルドの冷たいシステムや、「アダムとイブ」という呪縛をこえ、二人は自らの手で運命を切り拓いた。バグから始まった過酷な世界は、三人が寄り添い合って生きる、世界で一番あたたかくて幸福な「愛の箱庭」へと昇華し、物語は美しく穏やかな結末を迎える。