あらすじ
星を読むのをやめてから、もう六年になる。
空から降る星の魔力が、農業も軍事も暮らしも支える世界。
追放された星読みの一族の末裔・リラは、辺境で旅の薬師として静かに暮らしていた。
星の異変が見えても黙っている。見えていることを口にしたら、また全部失ってしまうから。
ある日、リラは高熱で倒れた少年を診察する。銀灰色の髪、深い灰色の瞳。穏やかに笑って、初対面なのに「ご迷惑をおかけしてすみません」と謝る少年。
彼の名はルシェ。星を喰らう体質を持つ、リヴェール王国の第三王子。
生まれた夜に星が一つ消え、感情を動かせば周囲の星が揺れる。十二年間城の奥に閉じ込められ、感情を殺すことだけを学んできた少年は、処分される前に姉の手引きで逃がされた。
――この子の体質は、本当に「星を喰らう」だけなのだろうか。
見えてしまった違和感にも、リラはまだ目を伏せている。