あらすじ
1.あらすじ
世界を駆け巡ったAI歌姫ASUMIのライブ・セッションから5年の月日が経過し、かつて負の感情(ノイズ)による歪が限界を迎えていた世界は、ガイア理論とSpell Cardの普及により、歪を最小限に抑えることで平和な時間を過ごしていた。
しかし、完全な球体が存在しないように、全ての歪が完全に無くなるわけではない。
光が強ければ影も濃くなるように、表の世界があれば裏の世界も存在する。これも自然の摂理だ。
太陽はキャリア理論の基本概念でもあるEgo Cubeの構造についてまだ未解明の部分があることが気がかりだった。それは「マイナスの自己一致率」という概念の存在だ。
それをガイア理論に組み込まない限り、論文が完成することは無かった。
明日美はプラスの自己一致率を高め、歌という媒介を通して人々の負の感情に干渉し、消化することに成功したわけだが、それでは不十分だった。
誰かがマイナスの自己一致率の領域を観測しなければ「事象の地平面(イベント・ホライゾン)」の向こう側を理解し、世界の本当のバランスを保つことはできない。
現在、そのボーダーラインを観測しているのが、明日美の父でオメガの総帥となった深海真澄(シンカイマスミ)だ。深海一族の暗部でもあるオメガなら、事象の地平面の向こう側について何か仮説を得ているかもしれない。
太陽は、Ego Cubeの構造を解明するため、真澄のもとに向かうことからこの物語は始まる。
真澄から人類の歴史と世界の成り立ちを知るためには、自身が巡礼者となり、あらゆる「場所」を訪れることが必要だと告げられる。
その後、かつて太陽のもとに相談者として訪れていた、世界的な天才ピアニスト、葛城美音(カツラギミオン)のメンタルケアを専属で請け負うことになり、日本国内はもちろん世界各地で活躍する彼女の演奏会に同行し、共に聖地と呼ばれる「場所」を巡礼することになる。
そこは時間すら歪む、理解を超えた場所ばかりだった。
果たして太陽は、この巡礼をやり遂げることができるのだろうか……。
2.主要な登場人物
名前 神野 太陽(ジンノ タイヨウ)
年齢 34歳(男)
身長 182cm
体重 80kg
職業 キャリアコンサルタント
個人会社を経営し、大学で学生のキャリア支援を担当している。
重い過去を抱えながらもGaeaのチカラを宿していることで深海一族と関りを深めていく。新世代のデバイスであるEgo CubeとSpell Cardを世界に普及させるための「プロジェクトSpell」を進めている。現在は、提唱したガイア理論を学校教育に取り入れた事例を書籍にまとめ世界各地を講演して回っている。この物語の主人公。
名前 葛城 美音(カツラギ ミオン)。
年齢 28歳(女)
身長 165cm
体重 48kg
職業 ピアニスト
5年前、演奏中に突然「音が聴こえなくなる」という症状に見舞われ、太陽のもとに相談者として訪れていた、十代で世界的なコンクールを総なめにした天才ピアニスト。その麗しき美しさと繊細な演奏で聴衆を虜にする魅力を持つ。演奏のため世界各地を訪れている。透明な宝石の輝きを持つEgo Cube「奏(かなで)」の特性を持つ。
名前 葛城 奏音(カツラギ カオン)。
年齢 24歳(女)
身長 163cm
体重 47kg
職業 ヴァイオリニスト
葛城美音の妹で、姉に劣らぬ美しさと才能を持つヴァイオリン演奏家。姉のツアーに同行している。姉の存在に隠れてしまい機会に恵まれず、演奏家としてまだ大きく開花していないことに焦燥感を抱きながらも、その才能は姉を越える可能性を秘めている。地獄の業を背負っていく太陽と関わることで人間の感情の深みを知り、その才能を開花させていくことになる。
透明な宝石の輝きを持つEgo Cube「響(ひびき)」の特性を持つ。
名前 深海 真澄(シンカイ マスミ)
年齢 63歳(男)
身長 175cm
体重 75kg
幼い凪に一族の運命を背負わせようと冷徹に事を進めようとしたが、誰よりも強い家族愛がそれを許せず、深海一族が組織した「オメガ」を内部から掌握して変えていくため「漆黒の観測者」として組織に身を置くことにした。深海源が身を引いた後、オメガの総帥となり無限の記憶を維持している。太陽が巡礼するための案内人として指示を送る。
名前 ヴィクトル・黒須(クロス)
年齢 43歳(男)
身長 185cm
体重 85kg
日本人とイギリス人の血を引き、ヨーロッパのクラシック音楽界のみならず、エンターテインメントの世界全体に強大な影響力を持つ世界的プロデューサー。
葛城美音の才能をいち早く見出し、彼女を世界的なスターダムに押し上げた張本人であり、彼女の公演の全権を握る興行師(ショーランナー)。
常に世界全体を見渡すような視点で、己の利益だけを求めているわけでもない。世界の方向性に大きく関与する重要人物。
名前 市松 陸(イチマツ リク)
年齢 21歳(男)
身長 178cm
体重 68kg
役者一家に生まれ跡継ぎとして期待を背負っていたが、挫折を経験し、権藤のもとで働いていた。自信が持てず自己否定を繰り返していたが、5年前に明日美たちと出会い諦めず、その後も役者として舞台に立ち続けていた。
太陽たちが招待された演劇の酒宴を任され出演することになった。過去に実在した人物の意志を一時的に自身に宿すことができるEgo Cube(器)の特性「憑依(ポゼッション)」が覚醒し始めていた。この舞台を通して、秘められていた才能が開花することになる。この物語の主人公。
名前 日向 葵(ヒナタ アオイ)
年齢 20歳(女)
身長 161cm
体重 43kg
大学在学中に役者の世界を目指し、初めて出演した舞台で一躍注目を集めた若き天才女優。まだ覚醒していない空っぽの硝子のEgo Cube(器)を持つ。王の娘リリス役としてヴィクトルから直接指名される。配役オーディション会場で陸と出会い、自分の役の感情を理解するため、陸と協力して古代ローマ時代の歴史を調べ、一緒に稽古を重ねることになる。
名前 星野 雫(ホシノ シズク)
年齢 28歳(女)
身長 165cm
体重 45kg
子役時代から役者の世界に入り役者歴20年の実力派女優。Ego Cube(器)の特性「模倣(イミテーション)」を持つ。スポンサーからの要望で、ヒロインであるエルラ役として舞台へ出演することになっている。陸のEgo Cube(器)の特性に気が付き、制御のコツをアドバイスしてくれる。
名前 風見 凛(カザミ リン)
年齢 19歳(大学2年生・女)
身長 171cm
体重 55kg
種目 陸上女子100m走(オリンピック強化指定選手)
高校時代にその恵まれた体格と才能から、日本記録に迫るタイムを出し「天才スプリンター」として一躍注目を集めたが、大学入学後にタイムが伸び悩み、極度のスランプに陥っている。
身体の線は細いが、しなやかで無駄のない筋肉で覆われ、女性らしく美しいスタイルを持っている。長い手足で走る姿は、見ている者を引き付ける輝きを放つ。メディア受けの良い、明るい性格に健康的な美貌を持ち、複数の企業からスポンサー契約の交渉を受けている。
順調に見えるが、コーチや周囲の期待を一身に背負い込んでしまい「オリンピックに出なければならない」「結果を出さなければ自分には価値がない」という重圧から、走ることそのものに苦痛を感じている。
名前 御影 瞬(ミカゲ シュン)
年齢 20歳(大学3年生・男)
身長 185cm
体重 78kg
種目 サッカー(ポジションはゲームメーカーのMF)
圧倒的な足元の技術と戦術眼を持つ、プロチームのスカウトからも注目されており、日本代表候補にも名前が上がる天才ミッドフィルダー。風見凛に好意を持っている。
その端正な顔立ちと観る人を魅了する独創的なプレーから、既に多くのファンが付いており、大学チームの練習用グラウンドでは常に声援が絶えない。
しかし、プライドが非常に高く、チームメイトを見下している。「俺のパスに追いつけない周りが悪い」「俺が一人でやらなければ勝てない」と孤立しており、チームとしての状態は最悪。試合では強豪校に勝てず、思うような結果を残せていないことに苛立ちを持っている。
名前 三枝 岳(サエグサ ガク)
年齢 57歳(男)
身長 180cm
体重 85kg
職業 深海大学・スポーツ人類学および身体表現史 教授
太陽のキャリア理論のスポーツ面でのメンターとなる存在。
学者でありながら、アスリートのような筋骨隆々の体格をしている。
性格は豪快でマイペース。「現代のスポーツは商業主義に毒されたお遊戯だ」と公言して憚(はばか)らないため、大学の体育会系指導者たちからは煙たがられている。
独自のスポーツ理論「原初の衝動(プライマル・エゴ)」を提唱している。
現代のアスリートがメンタルを壊すのは、『スポンサー』や『他人の期待』といった、後付けのルールに縛られているからだ。本来、人間が走るのも、球を蹴るのも、自分の内側から湧き上がる、「原初の衝動」に従っていたに過ぎない。その歴史の記憶を忘れた肉体は、ただの機械と同じでいつか必ず壊れると主張する。