あらすじ

『異星人と暮らしている』

― 100万円の「ありがとう」を待った10話 ―

一話
銀行の窓口で
わたしは過去を解約した
通帳の数字が減るたびに
夫の声が遠ざかる
それでも
未来は明るいと信じていた

二話
既読という小さな灯りを
何度も見つめた
返事の来ない二週間が
わたしの時間を
静かに削っていく

三話
画面の中で
あなたは笑っていた
新しい世界の中で
わたしのいない食卓を囲んで
ああ
ここにはわたしの席がない

四話
電話越しの声は
よく知っているはずなのに
まるで翻訳されない言語だった
「ありがとう」は
そんなに重たい言葉でしたか

五話
正しさはいつも
温かいとは限らない
あなたたちは間違っていない
ただ
わたしの星ではなかった

六話
あれはお金じゃなかった
若さであり
時間であり
名前もない祈りだった
それを差し出したのは
わたし自身だった

七話
同じ言葉を持つ人たちに出会う
「期待は重力よ」と
誰かが笑った
ここでは
言葉が通じる

八話
小さな布切れを買った
誰のためでもない
わたしのための贅沢
包みを開く指が
少しだけ震えた

九話
待つことをやめた日
風の音が変わった
あなたから届いた一行の文字は
もう
わたしを縛らなかった

十話
異星人たちは
今日も同じ言葉で話している
それでもいい
わたしは
わたしの星の歩き方を思い出した

あの100万円は
愛の証明ではなく
別れの授業料だった

そして春が来る
土の匂いのする場所で
わたしはもう
誰の返事も待っていない


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アルファポリス
アルファポリス2026/03/30
  • 現在の作品『異星人と暮らしている』 ― 100万円の「ありがとう」を待った10話 ―