あらすじ
連なる山々のふもとにある小さな村「聴風里(ちょうふうり)」。中秋の名月を迎えたその日、村は金木犀の香りと月餅を焼く甘い匂いに包まれていました。
老いた竹細工職人の林(リン)は、孫の阿和(アフォ)が見守るなか、村で最も大きな走馬灯を仕上げるべく、神業ともいえる手さばきで竹を編み進めます。やがて日が沈み、村の家々が供え物を庭に出し終えるころ、空には銀色の清らかな月が昇ります。
流れる水のように降り注ぐ月光は、職人として、そして家長としてこの一年間に林の心に積み重なっていた疲れを、優しく洗い流していくのでした。
特別な夜。聴風里の人々はみな、ただ静かに顔を上げ、すぐ手の届きそうなほど近くに浮かぶ「円満な月」を等しく見つめていました。