あらすじ
『異母妹の不祥事を押し付けられて会社を辞めた私、再就職先の冷徹社長に見初められて溺愛されています』
もう、いいのだと思った。
深夜の蛍光灯の下で、
誰の名前でもない謝罪を繰り返しながら、
私はずっと、“私”を使い切っていた。
妹の笑顔の裏側で、
父の都合のいい沈黙の中で、
私だけが、責任という名の泥を被っていた。
それでも、
家族だからと、信じていた。
――でも違った。
あの日、退職届に名前を書いたとき、
ようやく気づいたのだ。
私は、ただの“駒”だったのだと。
雨が降っていた。
すべてを流してくれればいいのにと思った。
けれど、止まった車のドアが開いて、
差し出されたその一言が、
世界を変えた。
「やっと見つけた」
その声は、
私の価値を初めて、私以上に信じていた。
だから私は、もう振り返らない。
誰かの尻ぬぐいのために生きるのは、
あの日で終わり。
今はただ、
選ばれた場所で、
選ばれた人の隣で、
ようやく――
“私として”息をしている。