あらすじ
「この場所でだけは、誰もがただの『排泄者』だ」
佐藤誠、三十五歳、独身。勤続十年のメーカー勤務。
彼のモーニングルーティンは、出社前に駅前の公衆トイレ「三番個室」に籠ること。そこは、理不尽な上司も、やる気のない後輩も、終わらない残業も存在しない、唯一無二の聖域。
ある月曜日の朝。胃の痛みに耐えかねて漏らした独り言に、隣の個室から返事が返ってきた。
「……わかるよ、あんた。月曜の雨は、魂まで湿気るよな」
それをきっかけに始まった、壁越しのデトックス・ダイアログ。
達観した「師匠」、生意気な「若」、そして女子トイレ側から参戦する「女王」。
顔も名前も知らない、けれど誰よりも本音をさらけ出せる仲間たち。
しかし、佐藤はまだ知らない。
隣で人生訓を垂れる「師匠」が、自社の雲の上の存在である社長だということを。
右の個室の「若」が、手を焼いている新人類の部下だということを。
そして壁の向こうの「女王」が、毎日自分を叱り飛ばす鬼の女課長だということを。
これは、公衆トイレという究極の密室から始まる、笑いと涙のサラリーマン再生讃歌。
「さあ、全部流して、戦場へ向かおうか」