あらすじ
人が死んだ瞬間に、そこで終わったように見える事件がある。けれど実際には、そのずっと前から少しずつ壊れていたもののほうが、あとまで厄介に残る。
助けを求めても届かず、言葉を飲み込まされ、居場所を削られていく。そうやって追い詰められた時間ごと埋められた事件は、ひとつ片づけたくらいでは終わらない。
警視庁刑事部事件調整係長・霞恒介は、死体や凶器だけを見て動く刑事ではない。現場に残された席や机、手帳や端末、紙の置かれ方を見て、何があったかより先に、何がどの順番で消され、抜かれ、薄められたのかを拾い上げる。
持ち込まれた自白や見過ごされた相談、黙り込んだ職場と何かを知りながら口を閉ざした家族。形は違っても、その奥にはいつも、先に奪われた言葉の痕が残っている。
これは、犯人を追うだけの話ではない。終わったことにされたものを、そのまま終わらせないための刑事事件録。