あらすじ
将来の夢なんて、何もなかった。
高校二年の春、進路調査票を前にして、何も書けずに立ち尽くした私。
周りが当たり前のように未来を語る中で、自分だけが取り残されている気がしていた。
そんな帰り道に立ち寄った祖母の家で、私はひとつの言葉をもらう。
「大丈夫、次の一歩だけ。」
それは世界で一番弱い魔法だと、祖母は言った。
その言葉に背中を押されるようにして踏み出した、小さな一歩。
図書室で出会った、ただ静かに文章を書き続ける同級生。
「途中でやめてもいい」
その何気ない言葉。
完璧じゃなくていい。
夢なんてなくてもいい。
書きかけの言葉のように、不確かなままでも、進んでいけると知ったとき、止まっていた私の時間はゆっくりと動き出す。
これは、何者でもなかった一人の少女が、自分の一歩を見つけるまでの、静かで小さな物語。