あらすじ
一九九三年、夏。
ジャスコのフードコートでバイトに明け暮れる十八歳の伊沢は、ある一人の少女に目を奪われていた。
ショートカットが似合うボーイッシュな彼女——原田さん、十七歳。
「好きな俳優さんとか居るの?」
「はい。チャック・ノリスが好きなんです」
予想外の返答から始まった、あまりにも無謀で、けれど純粋な恋の季節。
リアルの俺は飲み込んでしまった言葉。
付き合ってくれとさえ言えず、最後には失ってしまった「あの夏」の記憶。
もしもあの日、俺が勇気を振り絞って彼女を誘い出していたら?
もしもあの日、CB-1のタンデムシートに彼女を乗せて、夜の大阪港を駆けていたら?
梅田の『心斎橋ミツヤ』で飲むメロンソーダ。
新御堂筋を貫く、夜景の中のツーリング。
そして、漆黒の海に浮かぶ護衛艦のシルエット。
これは、三十年以上の時を経て、作者自らが綴る「自己救済」の物語。
失われたはずの季節が、今、新しい風(New Season)と共に塗り替えられる。