あらすじ
「セラフィーナ、我々の婚約は今日限りで破棄する」
夜会の大広間で、王太子レオンハルトは高らかに宣言した。隣には涙ぐむ愛人リリアーナ。三年間の婚約を踏みにじられた私は——ただ静かに微笑んだ。
「承知いたしました」
その一言に、王太子は動揺を隠せない。私が泣き崩れると思っていたのだろう。残念ね、殿下。私はそんなに安い女ではなくてよ。
『氷の令嬢』と蔑まれた三年間。愛人の存在に耐え、陰口に耐え、それでも私が黙っていたのは——殿下が目を覚ますのを待っていたから。
でも、その情けは踏みにじられた。
ならば、遠慮は要らない。
「婚約解消に伴う違約金と、ヴァルトシュタイン家が王家に貸し付けている全債権の即時返済をお願いいたします」
貸付総額、金貨八百万枚。国家予算三年分。
王国経済を実質的に握っていたのは、他でもない私の家だった。
愚かな王太子は知らなかったのだ。自分が捨てた婚約者が、どれほどの力を持っていたのかを。
これは、冷たいと蔑まれた令嬢の逆襲劇。そして——氷の仮面の下で燃え続けた、本当の愛を掴む物語。