あらすじ
中学2年生の**「俺」**は、不登校という現実から逃げるように、午前10時を過ぎてもベッドの中で天井の木目を眺める日々を送っていた。
SNSに流れる他人の充実した日常や成功体験に自己を削られ、「何者でもない自分」への惨めさを募らせる。
かつて「普通」を演じようとしたものの、教室の空気に馴染めず自室に閉じこもった中学1年の秋。
それ以来、自分に「合わない」という言い訳を免罪符にして逃げ続けてきた自覚が、彼を深く苛んでいた。
そんなある日、画面越しに目にした整然とした**「勉強動画」**が、彼の心に小さな火を灯す。
「自分もあんな風に変われるのではないか」
そんな淡い期待を抱いて埃を被った机に向かうが、空白期間の溝は深く、独力では教科書の一ページすら進めることができない。
自分の無力さと、これまで親の期待を裏切り続けてきた罪悪感。それらを抱えながらも、彼は今の虚無感から抜け出したいという衝動を抑えきれなくなる。
「塾に、また行ってみようかな」
身勝手な願いだと自嘲しながらも、彼は自ら引いたスタートラインに再び立つため、母の帰宅を告げる玄関の鍵の音をじっと待ち続ける。