あらすじ
「私、あざみちゃんに壊されないと息もできないのぉ……っ♡」
「……重い。退けよ、発情犬」
宇井薊(うい あざみ・25歳)は、その薄幸そうな見た目から男たちの無自覚な庇護欲を向けられることに心底辟易している、完全自立志向の平凡な事務員。
そんな彼女が誰にも言えない秘密。それは、都心の高級マンションで、ある女と「終わっている同居生活」を送っていることだった。
同居人の名は、尾張牡丹(おわり ぼたん)。
身長173cm、Hカップの暴力的な肉体美を誇る、超高級エステサロンのNo.1カリスマエステティシャン。外の世界では薄ピンクのサングラスをかけ、誰もがひれ伏す『孤高のバリタチ』として女たちを狂わせている彼女だが……薊と二人きりの密室(201号室)では、その本性を剥き出しにする。
彼女の正体は、薊の冷酷な罵倒と蹂躙を何よりも渇望する、極度の依存症でドMの「ネコ(発情犬)」だった。
元々は完全なノンケだった薊。最初は家賃のためと割り切り、この巨大なバケモノの異常な性欲を「一瓶一万円の高級クリームで手入れさせられた指先」で、ゴミでも見るような目をしながら事務的に処理していた。
しかし――外では完璧で高貴な女が、自分の指先一つでだらしなく雌の顔を晒し、泣き喚く姿を特等席で見下ろすうちに。薊の奥底に眠っていた「真性ドS」としての倒錯した支配欲と愉悦が、完全に目を覚ましてしまう。
「一人で生きていける」はずだった。
こんな終わっている関係、早く捨ててしまえばいいのに。
社会のルールに従うフリをしながら、互いの傷やバグを抱えたまま、ただ快楽と支配の泥濘(ぬかるみ)へと堕ちていく。
これは、社会という光から目を背け、狂った密室の中で自らの存在意義(実存)を定義し続ける二人の、どこまでも退廃的で哲学的な共依存の記録。