あらすじ
瞳を持たず、忌子として生まれた少年・飛鳥馬《あすま》は、唯一自分を愛してくれた兄を喪い、雪の中で死を待っていた。そんな彼を救ったのは、人の『もしも』を見せる、夢見師《ゆめみし》という仕事をする壮年の男、朔《さく》。飛鳥馬は、あの世で兄に聞かせる土産話を作るため、そして朔の救いが本当に人を救うものなのか見極めるため、彼と旅に出る。
二人が出会うのは、死者に会いたい者、忘れられない後悔に囚われた者、重大な病気を抱えた者。だが朔の力は、願いを叶える優しい奇跡ではない。残酷な救いでもあったのだ。旅の果て、飛鳥馬は朔の大きな嘘と喪失に触れ、また決定的な別れを経験する。
罪人となった飛鳥馬は、感情を知らない少女、静瑠《しずる》と共に戦場へ送られる。幾度もの死線の中で疑似家族のような絆を育み、それぞれが死者から遺されたものを抱えて生きる理由を探し始める。やがて飛鳥馬と静瑠はかつて、朔と歩いた世界をなぞり始め、想いを遺していく。
これは、大切なものを失った者たちが、遺された痛みと愛を抱え、それでも誰かのために生き、繋いでいく物語。あの世で待つ大切な人へ渡す土産話を探し続ける、喪失と継承の和風幻想譚。