あらすじ
打ち切りで唐突に終わった漫画『ペルセポネの冥戦』。
その世界に“私”は、よりにもよって敵サイドの厄介な中ボス──糸績みの魔女として転生していた。
不死の肉体を持ちながら、死ぬことも救われることもできない存在。
『転生して目覚めた瞬間に状況を理解』などという親切な展開はなく、ノーナはこの世界に生まれ落ちてから長い間、自分が何者で、どこにいるのかも分からないまま、ただ不死の化け物として孤独に過ごしてきた。
やがて世界の正体に気づいた時、彼女の頭に真っ先に浮かんだのは、この物語の推し──主人公であるオルフェンの護衛、エリマス・メレアグロスのことだった。
原作『ペルセポネの冥戦』において若き公爵エリマスは敵襲によって右目を失明し、その後も過酷な運命に翻弄される。
打ち切りで駆け足に処理された展開の中で、彼は報われないまま物語から退場していく。
彼女が望んだのは、ただひとつ。
──推しのエリマスを死なせないこと。
本来なら彼女は冥王軍の中ボスとして、主人公たちの前に立ちはだかり、倒されるためだけに存在するキャラクターだった。
だが彼女は、自分の役割を捻じ曲げる。その結果、物語は少しずつ原作から外れ始める。
王太子オルフェンの護衛として、エリマスと共に過ごす日々。
やがて原作通り本物の聖冠の神子ラミアが現れるが、事件の起こる順番も、登場人物たちの挙動も、知っている『ペルセポネの冥戦』とは変わっていく。
本来ならラミアが現れた時点でノーナは身を引くつもりだった。
自分はあくまで偽物であり、物語の本筋に居続けるべきではないと分かっていたのに。
物語の引きのために作られた厄介な中ボスとしての役割を降り、物語の筋書きを捻じ曲げたその選択が、やがて自分自身の不死の結末と、世界の運命そのものをも書き換えていく。