あらすじ
八月三日。焦げ付くようなアスファルトの上、僕は「確実に死ねる場所」を探していた。
本来なら、夏休みを謳歌しているはずだった。平凡で、目立たず、波風の立たない、僕の愛した「普通の高校生」として。
すべてが狂ったのは、七月二十二日。一学期の終業式の日。
財布を忘れたという、ありふれた不運。
合流を急ぐために選んだ、薄暗い近道の路地裏。
そこで僕は、見てしまった。
血まみれで倒れた男と、返り血で真っ赤に染まったワンピースを着た、一人の少女を。
「はい、これあげる」
彼女が微笑んで手渡してきたのは、命を奪ったばかりの包丁。
それが、僕が「殺人犯」に仕立て上げられた瞬間だった。
目撃者は、僕を疑う教師だけ。
証拠は、僕の手に残された鮮血だけ。
誰も信じてくれない。親友も、家族も、警察も。
逃れられない絶望の果て、屋上に立った僕の前に、再び「彼女」が現れる――。
「平凡」を奪われた少年と、「異常」を振りまく少女。
セミの鳴き声が止まない、残酷で鮮烈なミステリー短編。