あらすじ
砂に覆われた死の大地。わずかな水にすがる人々の息づかいの上に、気まぐれで残酷な狂乱の王が君臨する。水は祈りであり、通貨であり、鎖である。
王の刺客として血生臭い短剣を握る青年ファーリスは、ためらいを捨てて生きてきた。誰かの命が消える音にも、渇きに歪む嘆きにも、胸は動かない。世界がどうなろうと関係ない――そう言い聞かせることでしか、明日を繋げない。夜が来るたび、胸の奥に浮かぶ言葉がある。――北の夜空の一番星。それは希望のようでいて、彼にとってはただ、届かないものを知るための光でもあった。
そんな世界に、「救済の伝説」がささやかれ始める。砂漠のどこかに、人々を救えるほどの水が眠っているという。王はその奇跡を奪い取るため、ファーリスに潜入を命じる。伝説を追うスカベンジャーの一団へ偽名で紛れ、砂上船で旅に出ろ、と。
古代文明の遺構が口を開ける土地で、砂漠龍が影のようにうねり、渇きと暴力が常に背中を押す。嘘を抱えたまま仲間に近づくほど、ファーリスは知ってしまう――奪うために踏み込んだ場所に、守りたいものが生まれてしまうことを。
狂乱の王の影が迫る中、伝説の真実へと近づく一行。
その果てに待つのは、希望か、それとも贖いか。