あらすじ
声を失った少女が、深い森で白い狼に触れた。
ただそれだけのことだった。しかしその夜から、少女の体に何かが宿り始める。理由は分からない。狼はすでにいない。残ったのは、説明のつかない変化と——なぜか怖くないという感覚だけだった。
奴隷狩りに追われ、声をなくし、亡国の廃墟に逃げ込んだ少女。彼女を拾った老猟師は、三十年間この森だけで生きてきた男だった。多くを語らず、迷わず動く。そしてある夜から、狼を神のように語り始めた。
選ばれた理由も、変化の意味も、誰も知らない。それでも少女は前を向く。怖れるより、見たいと思う性分だった。