あらすじ
「72歳の老人の記憶を持ったまま、20歳の肉体に放り込まれた。」
そう書けば、よくある娯楽小説のように聞こえるだろうか。
だが、ここにあるのは無双も、ハーレムも、救済もない現実。
30年前に失踪した男、曽倉哲也。
あまりに若すぎる肉体の檻。
抗いようのない大きな流れの中で、人間という存在は、あまりに小さく、未熟で、不完全。
自分は何者でもないという、決定的な孤独。
ただ、一人の男が義務的に呼吸をするだけ。
全編、体言止めによる文体。
削ぎ落とされた言葉が、ただ「生きる」の輪郭をなぞる。