あらすじ

中学二年生の木崎小春が、自分の身体の「変調」を自覚したのは、小学五年生の、ひどく蒸し暑い夏の日だった。 最初は、ただの湿疹だと思っていた。背中の肩甲骨のあたりが、むず痒くて仕方がない。鏡を覗き込んでも、そこには赤みを帯びた小さな突起があるだけで、母に見せれば「あせもじゃない?」と一蹴される程度のものだった。 しかし、その突起は日を追うごとに硬さを増し、形を変えていった。そしてある朝、彼女が目を覚ますと、枕元に小さな、黒い産毛のようなものが落ちていた。鏡に向かい、必死に背中を反らせて確認した小春は、その場で凍りついた。 そこには、蝙蝠のそれを思わせる、湿った質感の小さな翼が生えていた。 同時に、前髪で隠れた額の左右にも、指先ほどの硬いしこりができていた。それは成長するにつれ、ゆるやかにカーブを描く漆黒の「ツノ」へと姿を変えた。 「――どうして、私が」 鏡の中の自分は、まごうことなき「怪物」の兆しを宿していた。 それから三年間、小春の日常は徹底した「隠蔽」によって構築されることになった。

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小説を読もう2026/03/28
  • 現在の作品角と翼 ―ツノとツバサ―