あらすじ
六月の終わり、梅雨の夜。大学帰りに彼女の部屋へ寄った僕は、先にもらった合鍵で静かな部屋に入る。
帰ってきた彼女が腕を上げた拍子に、腰骨のラインから覗いた黒いウエストバンドと白い文字——Calvin Klein。一瞬のことなのに、やけに目に残った。
ビールを飲みながら会社のこと、ゼミのこと。着替え、シャワー、明日の服の準備。彼女の生活の輪郭に触れるたび、三つ年上の彼女の毎日に僕がいることの意味を、まだうまく言葉にできないでいる。
「嫌だったら合鍵渡してないよ」
軽い言い方のなかに、少しだけ特別なものが聞こえた夜の話。