あらすじ
西暦192年の大晦日に暗殺されたはずのローマ皇帝が、1800年以上の時を超えて、よりにもよって、廃業寸前の売れない零細古書店「はなやま書房」の前に転生してきた。
理由は不明。本人にもわからないらしいが、転生する直前の記憶が徐々に蘇っていき、あの世の役所でひと悶着あったことを思い出す。
帰る場所のない元・暴君皇帝は、なし崩し的に「はなやま書房」に居候することになる。
対外的な身分は「イタリア・ローマからの留学生」。
ラテン語訛りの日本語はまあ、イタリア人ということにすれば何とかなる……のか?
だが、店主・花山がこの居候と暮らすうちに気づいたことがある。
コンモドゥスが語るローマは、教科書や映画で描かれる「暴君の帝国」とはまるで違っていた。
歴史は、勝った側が書く。
コンモドゥスの死後、元老院はただちに「記憶の断罪(ダムナティオ・メモリアエ)」を宣告した。
彫像は砕かれ、碑文から名前は削り取られ、そして元老院議員たちが「正史」を書いた。暴君。狂人。父の栄光を汚した愚かな息子——と。
だが、その歴史を書いた張本人カッシウス・ディオ自身が、こう記している。
「コンモドゥスは本来邪悪な人間ではなく、むしろ、これまで生きたどんな人間よりも無邪気な者であった」
十八歳で即位し、実の姉に暗殺されかけ、信頼した側近には何度も裏切られ、元老院には十二年間命を狙われ続けた。
それでも民に愛され、民のために闘技場に立った青年皇帝の新たな人生が——1800年の沈黙を破って、2016年の神保町の片隅でスタートする!
廃業寸前の古書店を舞台にし、21世紀の日本・東京の日常を生きる元・暴君皇帝の、笑えて泣ける現代ファンタジー。