あらすじ
黄金の麦畑が彼方まで広がったその島は、
【偽りの黄金郷】と呼ばれていた。
本土に住まうユートピアを羨望する人間にとって、
そこは長年、憧れの受け皿であり、誇るべき平和の象徴でもあった。
1900年代中期。
そんな【偽りの黄金郷】を【真なる金の都】へと変革させ、「牧歌的生活」の「洗脳」を解かんとするひとりの男がついぞ現れた……
曰く、
「温泉宿なんかに泊まるとするだろ?そうした場所の水たまりなんかには、大概『やすらぎの湯』やら、「開運の湯」なんていう、無駄な区分がされているもんだ。そして、そんなのに入るやつらは、みんな救いようのないアホなんだよ。いやね、別にね、『幸福が体に充填されていく!』なんてほざく奴に限定した話じゃないんだぜ。どんな湯を選んだとしても、効能なんてもの眉唾だと冷笑する擦れた人間だとしても、みんなおしなべてこの上ないキチガイなんだって話さ。だってそうだろう?どんな薬草が浮かべられたなんの湯にしたって、結局のところ、それら全てには、【皮脂の湯】が内包されているんだから。それなのに、あんな水たまりに体を浸からせるやつってのは、それすらも考えられないアホか、理解した上で受け入れているキチガイかのどちらかなんだよ、かならずね。」