あらすじ
異世界モノなのに異世界に行くまで36話かかります。よろしくお願いします。
◆
拝啓
語りの外の貴方へ
あなたのことを、書き残しておきたいと思いました。
誰も語らなかったとしても。誰にも届かなくても。
あなたは愛ある両親のもとに生まれ、努力が報われる才能を持ち、友人に恵まれ、愛する妻と出会い、生まれてくるはずだった命を夢見ていた。
何もかもを手にしたはずなのに、ある日を境にすべてを失った。
あまりにも整いすぎた不幸の連鎖の果て、あなたはひとつの結論に辿り着いた。
――これは偶然ではない。自分の人生は、何者かに壊されたのだ、と。
死の直後、あなたの前に現れたのは異世界の唯一神・ナスレスク。
あの邪神は告げました。「君は本来、幸福にしかなれない運命だったのさ、でもぼくが歪めた」と。
その時、三つの異能を与えられた。
満たされぬ魔力の器。
深淵に裂けていく思考。
そして、命を供して異なる理を捩じ込む力。
ナスレスクを滅ぼせば、壊される前の人生へ戻れる。
その契約を信じて、あなたは異世界へ転移した。
だがそこは、善なる唯一神ナスレスクを心から信じる人々が暮らす世界でした。
信仰は本物でした。祝福は確かに人々を支えていました。
それでもあなたは知っていた。あの神が何者であるかを。
魔物。
貌なき怪物。
偽りの神話。
あなたは奪われた人生を取り戻すため、世界に祝福として根づいた神を殺しに行った。
元の世界へ戻れましたか。
ご家族と平穏に過ごしておられますか。
返事はいらないのです。
ただ、知っていてほしかった。
あなたとの物語を、私はずっと覚えています。
共に戦うことができて私は幸せでした。
刎頸の友より
敬具