あらすじ
「先生、一緒に死んで」
精神科カウンセラーとして働いていた彼は、担当していた猟奇的殺人犯の少女によって、その心臓を刺し貫かれた。
歪んだ愛と狂気の果てに、すべてを終わらせたはずの彼は、魔力と「穢れ」が支配する異世界の回復術士へと転生した。
そこでの彼は、精神のもつれを解き、狂信的な救済を与える「聖者」として崇められていた。
だが、彼の正体は聖者などではない。
他者の絶望を自らの魔力回路に流し込み、ただ独りで穢れを溜め込み続ける『器』に過ぎないのだ。
教会の野蛮な浄化を否定し、冷徹なまでの専門知で騎士や貴婦人の心を救い、侵食していくカイル。
しかし、救われた者が至る境地は、前世で彼を刺し貫いた少女と、あまりに似通っていた。
「――ああ。……こんなに、世界が綺麗だったなんて」
救えば救うほど、依存の芽は育ち、破滅の円環が回り出す。
これは、孤独な術者が異世界で繰り返す、終わりなき『再演』の物語。