あらすじ
前世は四大監査法人で働き、過労で命を落とした公認会計士・白石凛。
目を覚ますと、乙女ゲーム世界の"断罪される悪役令嬢"——セラフィーナ・エルヴェシウス公爵令嬢に転生していた。
物語の「断罪イベント」はまさに今夜。
卒業舞踏会で第一王子が高らかに宣言する。
「セラフィーナ、お前が国庫から莫大な金を横領した証拠がある。婚約は破棄する!」
隣で微笑む聖女、それに群がる攻略対象たち。学園中の嘲笑。
——だが、セラフィーナは動じなかった。
なぜなら前世で「数字は嘘をつかない」と叩き込まれた彼女は、転生直後からこの国の帳簿を精査していた。そして知っている。
横領したのは自分ではない。王家そのものだ。
「殿下。横領とおっしゃいましたわね。では——この三年分の王室会計監査報告書を、この場で読み上げてもよろしいかしら?」
セラフィーナが懐から取り出した一冊の帳簿が、王国の闇を暴く。
婚約を破棄され、公爵家からも勘当され、すべてを失った彼女は、辺境の小さな領地を唯一の財産として受け取る。だがそこから、前世の会計・財務・経営知識というチートを武器に、荒廃した辺境を豊かな経済特区へと変貌させていく。
税制の最適化、交易路の開拓、ダンジョン産資源の先物取引——セラフィーナの「数字の魔法」は、剣や魔法よりも強かった。
辺境が栄えれば栄えるほど、彼女を切り捨てた王都は対照的に衰退していく。王子は焦り、聖女は化けの皮が剥がれ、陰謀に加担した貴族たちは自らの帳簿の矛盾で次々と失脚する。
——セラフィーナは復讐などしない。ただ、正しい数字を世に出すだけだ。
それだけで、嘘で塗り固められた者たちは勝手に破滅していく。
そして、王子とは対照的に、断罪の場でただ一人沈黙を守っていた第二王子ルシアンが、セラフィーナの辺境を訪れる。彼は王位にも聖女にも興味がなく、唯一「あの帳簿の数字が正しいこと」を見抜いていた知略の人。
「君の数字を見ていると安心する。この世界で唯一、嘘がない」
不器用で感情表現が下手な彼が、セラフィーナの隣で少しずつ溺愛を見せていく——