あらすじ
灯火の消えぬ街の果てに、
「不夜町」と呼ばれる異界が存在する。
そこは妖怪、亡霊、そして人の感情が交錯する狭間であり、現実と夢の境界でもある。
朔夜玄鸫羽。
彼は二つの世界を渡る狩人――“夢狩(ゆめがり)”。
そして、すでに滅びかけた妖の一族――“夜渡霊(やとれい)”の末裔でもある。
夜に彷徨う魂を導き、時に斬る宿命を背負った存在だ。
彼は怨念や悪夢から生まれる“悪霊”を狩ることで生き、
現実ではただの高校生として、死と隣り合わせの日常を過ごしていた。
だがある日、彼は一体の悪霊を“殺した”。
――はずだった。
その残骸から、一人の白い少女が生まれる。
過去の記憶を持たず、善悪の概念すら知らない。
それでいて、怨念に触れ、亡者の記憶を覗くという異質な力を宿していた。
そして何より――
彼女は、いずれすべてを壊す存在へと変わる。
それでもなお、玄鸫羽は彼女を不夜町へと連れ帰る。
灯りの絶えない居酒屋「安月斎」。
意味深な眼差しを向ける狐の女主人のもとで、
少年と“存在してはならない少女”の、危うくも静かな日々が始まる。
穏やかな夜を共に過ごし、
少しずつ崩れていく世界にも向き合いながら。
だが――
そのすべての優しさの裏側で、
逃れることのできない結末が、静かに近づいていた。