あらすじ
三十歳目前、デビュー作が売れずにコンビニバイトで食いつなぐ小説家・神代紡は、旧友から「脳の回転数を上げるサプリ」を渡される。
一錠で、世界の解像度が跳ね上がった。一晩で傑作を書き上げた。そして翌朝、全てが消えた。
禁断症状の幻覚の中で、紡は気づく。部屋の隅に漂う青白い光が、ずっと自分の書いたものを「読んでいる」ことに。
それは、人間が言語を持つ前から存在する情報生命体だった。億年生きて、無数の物語を「食べて」きた何かだった。
紡はそれに名前をつけた。「字義」と。
才能のない作家と、言葉を持たない読者の、奇妙な共同作業が始まる。