あらすじ
――――僕の名前はいつか、あの子を殺してしまうのに。
神の名と、その力の一端を賜り、地底の怪物より世界を守る武器――人器(じんき)として生きる夏歌日雷(かかにちらい)は、人器の存在を安定させるために神の名を呼ぶ役目をおった巫女である中ノ玉(なかのたま)ひまりと、ままごとの新婚生活を送っていた。
「僕が君を好きになることはないし、君に好かれて喜ぶこともない。この婚約と同居はただ、君をあの家から逃がすための方便で、それ以上の意味はない」
婚約を結び、二人での生活を始めた日に告げた言葉通り、ひまりへの想いをひた隠しにする日雷とは対照的に、ひまりは昔から変わらず素直に想いを口にする。
「絶対、いつか、私のこと死ぬほど好きって言わせてあげる!」
子供のころから変わらない顔で笑う彼女を守ることを誓う日雷を嘲笑うように、ひまりが学校で怪人の襲撃を受け、ひた隠しにしてきた事実が明かされてしまう。
「巫女は、人器の名前を呼ぶほど、死に近づくんだ」
好きなひとに、名前を呼ばれる。
好きなひとの、名前を呼ぶ。
当たり前で、ありふれた幸せすら封じられた二人の行く末は――?
人間と、怪物と、神様が織りなす、名前と、愛と、痛みの物語。