あらすじ
高校受験を控えた中学三年の冬、私は好きな人に桜のしおりを渡した。
「塾でもらったの、余ってるんだけど。しおり、いる?」
本当は伝えたい気持ちがあったのに、言えなかった。
だからそれを「おまじない」にしてしまった。
——また会えますように。
春になり、私たちは別々の高校へ進む。
連絡先は知っているのに、使うことはなかった。
高校生活が始まり、季節が巡り、最初の冬。
雪の日、私はふとあのしおりのことを思い出す。
言えなかった気持ち。
止まったままの時間。
そして、送れなかった一言。
「久しぶり」
その短い言葉を送るまでに、三ヶ月かかった。
おまじないに頼っていたあの冬から、
少しだけ変わろうとした、ひとつの恋の話。