あらすじ
高層ビルが幾重にも重なり、空さえ細く切り取られた都市——ネオ東京。
そこでは“落ちること”が、日常の一部になっていた。
来栖紫は、誰にも属さず、ただ教室の隅にいるだけの存在。
いじめられているわけでもなく、守られているわけでもない。
ただ、世界から少しだけ切り離されたように生きていた。
ある日、校庭に現れた三人の異形の人間。
彼らの背には、小さな“翼”があった。
「高い場所から飛び降りれば、人は進化する」
希望に満ちた言葉で語られる“変化”の可能性。
それに応えるように、クラスの中心にいた新田修二が叫ぶ。
「生まれ変わりたい」
そして、彼は躊躇なく飛び降り——
無残な肉塊へと変わる。
直後、三人は笑う。
「無理に決まってるだろ」
それは救済ではなく、選別だった。
混乱と悲鳴に包まれる中、
来栖紫は、理由もなくその後を追うように空へと身を投げる。
落下の中でふと浮かぶのは、幼い頃の記憶。
そして次の瞬間、彼の背に現れたのは——
紫と緑、二色の翼。
重力を操る力と、再生の力。
本来ありえない“二色持ち”として、紫は生き残る。
だがそれは、救いではない。
この世界では、強い絶望を抱えたまま死んだ人間が、
自我を失い“異形の翼”として再誕する。
それが、敵。
そして“進化”とは——
生き残れる者と、そうでない者を分けるための、残酷な仕組みだった。
三人に導かれ、紫はその世界へと足を踏み入れる。
かつて人間だった存在と戦いながら、
仲間を失い、力を覚醒させていく。
なぜ自分だけが生き残ったのか。
この世界は、何のために存在しているのか。
答えを求めて辿り着くのは、
ネオ東京で最も高い場所。
すべての“落下”の果てに待つ、最終地点。
そこで紫は、人類の進化の正体と対峙する。
これは——
死ねなかった少年が、
“生き残ってしまった意味”を問う物語。